アトピーだからといって犬が飼えないわけではありません。そう、アトピー性皮膚炎でも犬は飼えるんです。
しかし、子どもの湿疹から大人の慢性的なアトピーまで、もともとアトピー性皮膚炎をもっている人が犬を飼うということは、普通の人よりも日常生活でやることが増えます。ペットの面倒や手入れ、部屋の換気や掃除、シーツの洗濯や交換など、そこそこめんどくさいです。
動物を飼うということは命を預かるということ。自分の体調も大切ですが責任をもって面倒をみること、そして、さいごまで育てあげるといった覚悟も大切です。
アトピーと犬アレルギーは違う
まず、アトピー性皮膚炎と犬アレルギーは違います。というのも、アトピーは犬を飼っていなくても症状がありますよね。日常生活のストレスや食べ物に原因があることが多く、必ずしも犬に原因があるとは限りません。
しかし、犬を飼うことでハウスダストやダニと触れ合う機会が増えるので、そういった意味ではアトピーを悪化させる原因のひとつでもあります。
犬アレルギーは犬の唾液、フケ、抜け毛などにアレルギー反応を起こし、目のかゆみ、鼻づまり、くしゃみ、肌のかゆみといった症状が起きるアレルギー疾患です。
この場合は、卵アレルギーの人が卵を食べるとダメなように、犬アレルギーの人は犬を飼ってはダメです。
アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患のひとつでもあるので、アトピーを患っていると犬のアレルギー反応もみられるケースが多くあります。とはいえ、犬アレルギーの血液検査の数値がさほど高くなければ、実際にはあまり症状にあらわれないこともあります。これはわたしがそうです。
また、ハウスダストやダニはほとんどの確率でアレルギー反応がありますが、動物のアレルギーはアトピー性皮膚炎だからといって必ず反応するわけではありません。
アレルギーの血液検査は皮膚科で3000円ほどでできます。検査結果で犬の数値が高ければ飼い主と犬のためにも飼わないほうがいいです。しかし、陰性や低い数値であれば迎い入れていいのかなとわたしは思います。
大切なのはストレスなく暮らす工夫
わたしはこのすべてのアレルギーを持っています。ちなみに犬のアレルギー反応もそこそこあります。しかし、毎日犬と暮らしていますしベッドで一緒に寝ています。
ずっとアトピーだからと犬を飼うことをためらっていましたが、実際に迎え入れると全然大丈夫でした。というか、大好きな犬をアトピーが原因で手放すことになるのは絶対にイヤなので、どうにかこうにかアトピーが悪化しないようにいろいろ気をつけているんです。
アトピー体質の人がペットを飼うということは、ペットの世話と同時に家事もちゃんとこなさなければなりません。あまり神経質になりすぎてもよくないですが、これも含めてペットの世話ということをしっかり認識して、楽しみながら愛犬と暮らせる環境をつくることがなによりも大切です。
犬との生活で気をつけていること
- 犬が入ってもいい部屋とダメな部屋をつくる
- ソファやベッドには必要以上に乗らないようにする
- ソファは革製またはカバーの取り外しができるものにする
- カーペットや絨毯ではなくフローリングにする
- 空気清浄機を設置する
- 掃除機ではなく皮脂汚れも取れるフローリングシートを使う
- 犬のシャンプーは3週間から1ヶ月に1回の頻度でおこなう
- 犬のトイレ後は足と床についた尿飛散を掃除する
- 犬に顔や手を舐められないように注意する
とにかく清潔にすること
犬のせいでアトピーが悪化する最大の原因は不潔だからです。犬を飼うといつも以上に部屋が汚れます。抜け毛、ホコリ、唾液、尿、皮脂など、これらの汚れはなにもしなくてもどんどん増えていきます。
犬がおしっこをしたらすぐにトイレシーツを取り替えることは当たり前ですが、トイレの周囲に飛散した尿や犬の足についた尿までもきれいに拭き取ることが必要です。そうしないと、おしっこのついた足で部屋中を歩き回り、知らないうちに家中が汚れてしまいます。
こういった目に見えにくい雑菌がアトピーの症状を引き起こすんです。
また、家の床にはわたしたちの想像以上のゴミやホコリが落ちています。犬はその地面に一番近い位置で生活しているので、歩くだけで舞ったホコリが付きますし、床にゴロンと寝転ぶこともあります。犬の長い毛はまるでお掃除モップのようにゴミやホコリを吸着し、知らないうちに汚れていくんです。
犬はその状態でソファやベッドにのぼります。そして飼い主はスキンシップを楽しみます。すると、これまで以上に家の中にあるハウスダストに触れることとなり、アトピーが悪化してしまうこともあります。
犬の毛は短くしておき、汚れをささっと拭き取れるようにしておくのがベストです。
犬アレルギーの人には抜け毛がほとんどないトイプードル、マルチーズ、ヨークシャーテリアなどシングルコートの犬種がおすすめですが、もちろんこれはアトピーの人も同じです。
しかし、アトピーは犬の抜けた毛やフケに反応するわけではありません。なので、部屋の掃除や換気を心がけないとトイプードルを飼ったからといって安心ではありません。
犬の散歩はアトピー持ちには向かない
愛犬と一緒に寝たいのであれば、散歩には連れて行かないほうが賢明です。それは、外気の汚れを寝室のベッドまで持ち込んでしまうからです。
外気の汚れとは、排気ガス、ホコリ、花粉、PM2.5などの粒子のこと。これらが散歩によって犬に付着し、知らないうちに家の中へと入り込んでしまいます。わたしたち人間は毎晩お風呂に入りますから外気の汚れを一度リセットできます。
しかし、犬を毎日お風呂に入れるのは犬の健康にとって悪影響なので現実的ではありません。あまり頻繁にシャンプーをすると肌荒れやフケの原因となってしまうからです。こういった目に見えない汚れが蓄積していき、知らぬ間にアトピーの症状がひどくなることがあります。
こういった場合に備え、アトピーの人は室内の運動量だけでOKな小型犬がおすすめです。毛が抜けにくい小型犬は、ミニチュアシュナウザー、トイプードル、ヨーキーなどです。
ちなみにわたしも愛犬を散歩には連れていきません。飼い始めたころは毎日散歩していましたが、いま思うとあまり肌の調子がよくありませんでした。いまは毎日一緒に寝ていてシャンプーは月1回です。おかげさまで肌がかゆくなることもアトピーが酷くなることもありません。
犬の唾液には気をつける
犬を飼ううえで注意すべきもう一つのことは、犬の唾液です。犬の口腔内は人間と同じように雑菌だらけで唾液も例外ではありません。
そのため、犬アレルギーでなくても犬に舐められると痒くなる人はたくさんいます。もちろんアトピーを患っているのならたとえ愛情表現であっても顔や手を舐められないように注意する必要があります。
また、犬はよく自分で足を舐めるので、間接的にソファやベッドに唾液がつくこともあります。
犬を飼うということは想定外のケースとどれだけ向き合えるかです。すべてを完ぺきにこなすことはできませんし、それを求めることは現実的ではありません。
すべては犬種選びからはじまる
犬を飼ううえでアトピー体質ということは普通の人よりもハンデがあります。犬は家族の一員ですしそのぶん責任も生じます。しかし、アトピーだから犬が飼えないわけではありませんし、犬との生活でストレスが減りアトピーの症状も改善するかもしれません。
さいごにアトピー性皮膚炎の人が犬を飼ううえで大切なことをまとめました。
- 抜け毛や体臭の少ない犬種を選ぶ
- 初心者でも飼いやすい犬種を選ぶ
- 部屋の掃除は毎日おこなう
- 部屋の空気は毎日入れ替える
- 犬の尿や唾液は毎回拭き取る
- 犬の散歩は控える
- 犬はつねに清潔にしておく
これは基本的なことで、これをクリアするとアトピーが悪化しにくいよというもの。愛犬との暮らしのほとんどが新しい発見なので、実際には飼ってみないとなにもわかりません。
しかし、大切なことはアトピーの原因となるリスクをできる限り減らすこと。そのためにはまず、ずっと欲しかったわんこではなく、手入れのしやすいわんこを選びましょう。
たとえアトピーであっても犬は無条件で愛情を注いでくれます。アトピーでも犬が飼いたい人へ、犬は本当にいいですよ。そして、犬も自分もハッピーになれますように。