投稿を削除するだけでは消えない
iPhoneのアプリを起動して数タップすれば、簡単にツイートやインスタに写真をアップできてしまいます。この手軽さゆえに、本来ならば公開するべきではない写真までネットを通じて世界中の人にさらしてしまう危険があります。
「嫌だったら投稿を削除すればいい」と思うかもしれません。でも、一度ネットに公開した投稿を完全に削除することはとてもむずかしいです。
まず、ツイッター、インスタグラム、フェイスブック、アメブロなどSNSに投稿した内容は、瞬時に情報収集サイトへ転載されます。多くのサイトは個々でデータを保有していますから、ひとつの投稿を削除するには、この情報収集サイトすべてにアクセスして削除を依頼しなければなりません。
また、誰かがその投稿をコピーして転載してしまったら、その先の情報まで消す必要が出てきてしまいます。
非公開アカウントでも100%安心ではない
「自分のアカウントは非公開だから大丈夫」と思っても、決して大丈夫ではありません。もちろん、アカウントが非公開になっていれば情報収集サイトへ転載されることはありません。でも、あなたのフォロワーが投稿をコピーして、ほかのサイトに書き込むかもしれません。
目の前の友達に話すのとはわけが違います。
ネットはすべて公の場です。たとえインスタのアカウントに鍵をかけていても、ネット上に公開していることには変わりありません。もしフォロワーの誰かがその写真を悪用したら、その写真をコピーしてネット上に公開したら、その写真は全世界の人に見られる状態になってしまいます。
基本的にネットはシェアされる前提にあるもの。たとえ非公開アカウトでもネットに公開していることには違いありませんので、いま一度SNSへの投稿を見直すべきかもしれません。
また、フェイスブックやインスタグラムなど、SNSにおける自分のフォロワーを本当に信頼できる人のみに限定することも大切です。
無意識に他人を巻き込む危険性
ネットに公開した写真を後から削除することは難しい。だからこそ、永遠に残っても困らないものにしなければなりません。
インスタ、ツイッター、フェイスブック、アメブロ。SNSのすべての投稿は今だけでなく将来のことも考える必要があります。
例えば、大好きな子どもの写真をインスタにアップしていると、将来子どもから訴訟を起こされるかもしれません。子どもはネットの危険性などまったく知りませんから、SNSに載せられることなど何とも思っていません。
しかし、それは今だけのはなしで、将来的にはどうなるかわかりません。小学校でITリテラシーの授業を受けたあと、本気で消してほしいと怒ってくるかもしれません。
また、幸せをシェアしたいと思っても、恋人との写真は公開しないほうが賢明です。それは別れたときに厄介だからです。自分の投稿は簡単に削除できても、相手の投稿は自分では削除できません。
インスタグラムにアップした子どもの写真は、子どもが成長して就職や結婚するときに影響はないか。また、彼氏や彼女と一緒に撮った写真は数十年後に見て恥ずかしいものではないか、仕事や結婚に影響はないか。
ネットに載せる情報や写真は、たったひとつの投稿でも、その先にある将来のことを考えなければなりません。
子どもが大人になったとき、あなたの投稿が悩みの種になるかもしれません。また、いまの相手と別れた後も、当時の交際の様子が鮮明に残り続けてしまうかもしれません。
数十年後の自分が見ても恥ずかしくないか、消したいと思わないか、そこまで考える必要があるわけです。
アップロード=世界中に公開
どんな写真や小さな書き込みでも、ネットに投稿したものには炎上する可能性と危険性があります。
そして、一度拡散すると完全に削除することはむずかしく、自分が死んだあとも残り続けます。それをデジタルタトゥーといいますが、この言葉の意味はバカッターやお騒がせ動画などの炎上投稿だけではありません。
消したいのに消えない、消しても消しても残っている。ネット上に投稿されている自分の写真や実名を晒された書き込みが自らの意図と反するかたちで残っていたら、それもデジタルタトゥーです。
たとえば、カフェで話した友達の悪口はその相手以外知るすべがありませんし、録音していなければ記録にも残りません。しかし、Twitterに投稿すれば、それは全世界の人へ発信していることとおなじになります。
実際にはツイートボタンをタップするだけですし、億単位の投稿が溢れるなかのひとつにすぎません。それが、あたかも友達に伝えるような感覚でネット上にアップしてしまう理由のひとつです。
ネットは日常の中にある当たり前の存在なので、もはや現実と区別するほうが難しいでしょう。しかし、その一線を越えると全世界につながるということを忘れてはなりません。
あとから訪れる「消えない」ネットの恐ろしさ
なにも拡散や誹謗中傷だけがデジタルタトゥーではありません。
日常生活で事件に巻き込まれたり世間の注目を浴びなくても、そのタトゥーはいつか消したいと思う日が訪れるかもしれません。
メイクで盛った自撮りの写真、彼氏と撮ったインスタ映えの写真、趣味で始めたYouTuberの動画、美容整形モニターの症例写真、小さくて可愛い息子の写真。
あまり深く考えずアップした写真こそ、10年後、20年後に後悔しがちです。
ふざけて投稿するバカッターとは違い、これらには必ず投稿する理由があります。しかし、当時はその写真を公開することでなにかしらの恩恵を受けても、時間が経つにつれ状況は変化しますから、それが日常生活の邪魔をするようになります。
もちろん、ネットに残り続ける写真や情報になにも感じないのであれば問題ありません。しかし、消したいのに消えないという状況になれば、それは大きな悩みを抱えることになります。
たとえば、ラブラブな写真にうつる彼氏とは別れ新しい男性と結婚したとき、割引きにつられ契約した美容整形モニターの症例写真がきっかけで周囲に整形がバレたとき、大人になった子どもに幼い頃の写真を消してほしいと責められたとき。
ネット上に拡散していなければ大元の投稿を削除すればすみます。しかし、ほかのサイトやSNSに転載されそれがねずみ講のようにどんどん広がっていたら、もう完全に消すことはできません。
また、そのときにアカウントのパスワードを覚えていなければTwitterやFacebookといえど投稿を消すことはできません。
もはや生活の一部となったネット上に自分や友達との顔写真をアップする行為。しかし、そのときのノリや感覚ではなく、自己承認欲求を満たすためでもなく、その先にあるリスクや状況の変化も総合的に判断することで、将来の自分を守ることができます。
いまだテレビの影響はすさまじい
有名なテレビ番組で紹介された、ニュースやバラエティ番組に出演した、芸能人としてデビューした、犯罪や事件に巻き込まれた・起こしたときなど、良くも悪くもテレビで取り上げられるとネットは盛り上がります。
すると、ネットニュースになり、まとめサイトが作成され、過去に投稿したSNSの写真は勝手に悪用されてしまいます。
まったく無関係の出来事でも、ある日突然、自分の写真や情報がネット上に拡散してしまうこともあります。それは、デマ情報の被害者になってしまったときです。まったく身に覚えのない罪をきせられ、画像はもちろん誹謗中傷やあることないことを晒されてしまいます。
テレビの影響はとても大きく世間の話題性も一気に高くなります。すると、人々はスマホ片手にググり、GoogleやYahoo!の検索結果は活性化され、ネットニュースは頻繁に配信され、記事のアクセス数は増え、SNSやブログは炎上していきます。
また、それは誹謗中傷や写真の拡散だけにすぎず、親しい友人、関連する投稿、写真のうつりこみをたよりに個人情報がかき集められていきます。
まるでクモの糸をたどるように、小さな情報ひとつひとつをつなぎ合わせていくんです。
これをモザイクアプローチといいますが、これは実名、自宅の住所、家族構成、職業、勤め先、職場の住所など一切公開していない情報も簡単にみちびき出せてしまう恐ろしい手法です。
世間の注目を集めただけで一瞬にしてプライバシーが侵害される。これは、昭和や平成のはじめにはなかったネット社会の恐ろしさです。
ある日突然デマの被害者になるかもしれない
デマ情報こそ恐ろしいネット社会の闇です。
しかし、SNSのアカウントを公開し普通に利用していれば、誰もがデマの被害者になる可能性があります。
デマ拡散の被害者にならないためには、インスタやFacebookで実名を公開しないこと、安易に顔写真やプライベートの画像を投稿しないことです。これだけで大きくリスクが軽減されます。
垂れ流しのテレビには残らなくても、ネットには永遠に残り続ける恐ろしさがあります。一度拡散しデジタルタトゥーとして残ってしまうと、どんなに過去の出来事でも検索すれば出てきてしまいます。
また、たった一度の過ちですら実名報道をうけると、ネットには前科前歴の情報が残り続けます。リアルとバーチャルの境界線はもはやありません。平穏に暮らすためには、まずは現実の生活を気をつける必要がありそうです。
炎上のタネはあちこちに潜んでいる
誰もがスマホを持ち街中にカメラが溢れるなか、何気なく生活しているだけでもネットに晒されるリスクがあります。
たとえば、電車内でだらしなくぐったり寝た、露出の多い服装をした、店員に大声でクレームを言った、路上でケンカをした、あおり運転をしたときなど。思わずスマホで撮影したくなるようなこと、反響がおもしろそうなことはツイッターなどSNSのネタになりやすい。
昨今のニュース番組にはボカシ加工されたTwitterの投稿がよく登場します。迷惑行為があってはなりませんが、日常の些細なことも炎上の火種になってしまうということを覚えておく必要がありそうです。
自分がアップしたプライベートな動画や顔写真だけでなく、他人に盗撮に近いかたちで撮られた動画や写真にもデジタルタトゥーの危険があります。
一度拡散したら簡単には消せないネットの世界。だからこそ、おおもととなる写真やムービーを撮らない、撮らせないこと、ネタとなるような行動をしないことが大切です。
それはスマホ、テレビカメラ、写真の写りこみなど方法は問いません。どんな場合でもネットに公開されるリスクがあるからです。
しかし、ここまで気をつかっていては日常生活に支障をきたします。自分はどこまでOKなのか許容できる範囲を見極め、このネット社会とうまく付き合うほうが賢い選択といえます。
一度入れたタトゥーは人生を台無しにする
からだに入れたタトゥーに後悔したら、レーザー治療で消すことができます。しかし、それにはお金がかかり痛みもともないます。
そしてなによりも完全に消すことはできません。
デジタルタトゥーもまったく同じです。
不本意にもネット上に残り続ける情報は弁護士に依頼すれば消すことができます。しかし、それには着手金や1件につき数十万ほどのお金がかかります。
そしてこれも皮肉なことに完全に消すことはできませんし、途方にくれるほどの時間がかかります。
どんなタトゥーも一度入ってしまった以上、なかったことにはできないんです。また、そのタトゥーはプライバシー、経済面、就職や仕事、身内や家族にまで影響することを忘れてはなりません。
デジタルタトゥーの恐ろしさを理解し、ITリテラシーをしっかりと持ち、そのきっかけとなるタネをまかないこと、自分の身は自分で守ること、予防することが大切です。
削除はひとつひとつ自分でおこなう
一度拡散してしまった写真をひとつひとつ探すことはとても難しく、また、思いもしないサイトに掲載されていることもあります。
そんなときには、パソコンからGoogle画像検索へアクセスし、調べたい写真をアップロードまたはURLを貼り付けて探します。
そして、そのサイトの管理者へ問い合わせフォームから削除を依頼します。もし、適正な運営をしている管理者であれば、ポリシーに基づき対応してくれると思います。けれど、海外サイトや個人による運営など、すべての対応がスムーズとは限りません。
また、「プロバイダ責任制限法」のガイドラインに基づき、書面で通達する必要がある場合もあります。
これはプライバシー侵害や名誉毀損において該当箇所の削除依頼をする方法です。
そしてこれらの削除申請は必ずその本人がおこなわなければなりません。
逆SEO、削除依頼の代行など風評対策の会社に依頼するのはやめてください。かえってめんどうになります。
まず、逆SEOは検索結果に表示されにくくするだけで、該当のページを削除するわけではありません。なので、時間が経つとまた表示されることがあります。
複雑で手間な作業を代行してくれるのでとても魅力的に見えますが、本来は手数料もかかりませんし自分でできることです。手間賃として高額な費用を請求され、けっきょくネット上に残ったままになってしまうことも少なくありません。
正しいリテラシーを持ち自分で自分を守る時代
スマホで簡単にネットへ投稿できますが、それは目の前の友達へ伝えることとは違い世界中に発信するということです。
ネットが普及する前は若気の至りですんだことも、ネットに残り続ければ一生付き合うことになるかもしれません。
自撮りやキス写真など時間が経って後悔するもの、自宅や車のナンバーなど個人情報が判別できるもの、これらの投稿にリスクがあるということを、正しいITリテラシーを持ち理解することが大切です。