SNSの住所特定が怖い理由
どんな投稿も特定の材料になる
SNSに軽い気持ちで近況をアップすることが当たり前のなか、正しい知識とリスクを把握していないとネット上に住所を晒されるリスクやストーカーなどの被害を招く恐れがあります。
そして驚くことに、ネットで住所を特定された人はみなが本名や個人情報を公開していたわけではありません。
それは、たとえ非公開アカウントでも、何気ないごく普通の投稿でも、それらには個人を特定する材料が隠れているということです。
もはやあなたのアカウントに投稿された情報は、あなたが想像する以上の個人情報を秘めています。それは一見パッとみただけではわからないからこそ、リスクに気づきにくい。
気軽につぶやくツイート、日常のハッピーな部分を切り抜いたインスタの投稿、プライベートをシェアしたい24時間で消えるストーリー。
どれも細心の注意を払わないと個人情報の特定は容易にできてしまうということ。
すべてはモザイクアプローチという手法
バカッター炎上騒動、あおり運転など社会に影響を与えた事件、個人的な感情を満たすストーカー。ネットの情報で個人や住所を特定されてしまうケースは数多くありますが、これらはどうやって割り出しているのでしょうか。
それは、複数の断片的な情報をまるで蜘蛛の巣のようにつなぎ合わせることによって、確たる情報を導き出す手法「モザイクアプローチ」によって特定されています。
なので、毎回SNSにアップするときに「よし、これにはとくに個人的な情報は入っていないな」とちゃんと確認していても、これまでにアップした複数の投稿を断片的につなぎ合わせると、初めて見えてくることがあるかもしれません。
自分がモザイクアプローチをされないためには、モザイクアプローチのやり方を知ることが大切です。
言葉に潜む位置情報
モザイクアプローチのやり方その1。
何気ないつぶやきや投稿に隠れた住所や個人特定に役立つキーワードを抽出し、それらをつなぎあわせることによって個人情報を特定する方法。
簡単に判明する行動履歴
一見どこにでもある普通のツイートも、そのなかにあるキーワードによってはあなたの行動履歴が導き出せてしまい、それが住所や個人特定の材料として使われてしまいます。
「ちょっと駅前のスタバ寄ってから会社行く」
「というか人身事故で電車遅れてる、めずらしいじゃん」
このたった2つのツイートからも、あなたの最寄駅を推測することができます。
例えば、駅前にスタバのある駅などたくさんありますが、投稿時間に人身事故の影響で電車が遅延している路線はそうそう多くありません。また、人身事故がめずらしいというキーワードからも絞り込みが可能です。
このツイートから推測できる位置情報はたかが最寄り駅くらいですが、そのほかの投稿も同じように導き出せばあなたの行動範囲など容易に判明します。
この例では駅名すら登場していませんが割り出すことができてしまいます。なので、駅名、会社名、学校名などの固有名詞を投稿すると、もうひと段階上のモザイクアプローチが可能になってしまいます。
また、リアルタイムでつぶやくのではなく、少し時間をズラして投稿することをおすすめします。タイムラグをつくることでその情報の特定が少し困難になるからです。
不意に映り込んだ情報
モザイクアプローチのやり方その2。
写真に写り込んだかすかな情報を頼りに、住所や生活環境を割り出す方法。
街中のあらゆる要素
例えば、近所の公園や自宅の周辺で撮影した写真に、行政名が記載された看板や掲示板、店舗や会社名が記された看板、電柱に記載された番地、市町村によってデザインが異なるマンホールなどの情報が映り込んでいたとします。
不意な写り込みがそのいずれかであったとしても、それがどこのどの公園なのか、どの市町村でどのあたりのエリアなのかは調べればわかってしまいます。
部屋から見える窓の外
自宅のベランダから撮影した景色も住所特定に一役買ってしまいます。自宅のベランダといえど、夕陽がきれいだから、虹がかかっていた、お正月の初日の出といった理由で案外アップしてしまうものです。
例えば、遠くに見える建物、ランドマーク、道路の形状や標識、ビルやマンションの外観からおおよその方角や住所の特定、また、景色の高さからマンションの何階なのかも推測できてしまうので、住宅密集地だからといって関係ありません。
人気ユーチューバーが窓の外を絶対に映さないのもこういった理由があります。なので、部屋の中で撮影した写真でも窓の外が映り込んでいたらこういった推測もできてしまうんです。
マンションの住宅設備
ハイブランドの服を自慢したいからといって、洗面所やお風呂で自撮りした写真をインスタに投稿するのはやめましょう。
というのも、アパートやマンションは建築会社や築年数によって同じ洗面所やお風呂場の設備を使用していることがあるから。
例えば、同じ洗面台を設置しているマンションの建設会社や築年数を割り出し、ほかの投稿からおよその住所を推測できれば、マンション名が特定できてしまいます。
テレビやガラスなど反射するもの
リビングやダイニングには宛先の記載されたDMやはがき、子どもの幼稚園のバッグ、店舗名や住所が記載された領収書やレシートなど個人情報のわかるものがたくさんあります。
「そんなもの単体で撮影しない」と思っても、テレビ画面、スマホの画面、ガラス、ミラーといった反射する素材に写り込んでしまうことがあります。また、車のボンネットやフロントガラスも写り込む要素のひとつです。
誕生日会、飲み会、ホームパーティーで撮影した写真はアップする前に映り込みを確認したほうがいいです。また、写真よりも動画のほうが映り込む確率はぐーんと高くなります。
なので、スナップチャット、スノー、TikTokへの投稿も注意すべきです。
セルフィーに写り込むもの
自撮り写真も写り込みのリスクがあります。それは自分の瞳やサングラスに写り込んだ情報から特定できてしまうからです。
「たとえ映り込んだとしても小さくて読めないから大丈夫でしょ」と思わないでください。
最近のiPhoneの解像度はとても高く、画像補正アプリで拡大しちょっとフィルタをかければ簡単に情報を浮かび上がらせることができてしまうからです。
意図的に書かれた情報
モザイクアプローチのやり方その3。
ITリテラシーの低さを狙った意図的な書き込みを利用し個人情報を特定する方法。
個人情報がたくさん詰まったプリクラ
プリクラを撮影するのは記念を残したいとき。だからこそ、プリクラ内には足跡となる情報が盛り込まれてしまいます。
「3-〇組!」
「〇〇高校!陸上部」
「〇〇メン」
「〇〇ゼミ 懇親会」
つい無意識に書いてしまった落書き、とくに学生は自分たちの所属を仲間意識の強さからプリクラに盛り込んでしまいがちですが、自分の実名、友人の名前、学校名、ゼミ名、サークル名、部活名はプリクラに書き込みしないほうが賢明です。
また、一見なんのことかわからないイニシャルも、ネットで検索すれば答えが導き出せてしまうこともあります。学校の体操服、制服、バッグの映り込みも危険。そこに名前の刺繍が入っていたらもっと危険です。
とにかく撮影したプリクラをネットに投稿するのはモザイクアプローチのリスクが十分にあります。自分だけでなく友達の被害も招くことになりかねないので、慎重に。
自己顕示欲を満たす投稿
あえて固有名詞を登場させるときは、たいてい「この事実をシェアしたい、認められたい」という心理があります。
例えば、会社でキャリアが評価されたとき、ちょっとステイタスな催事に参加しているとき、ネットワークビジネスの勧誘をしたいとき。
こういったケースの多くは自分の氏名や所属する組織の名前が写り込んでいることが多く、また自ら公開していることもあります。
グーグルであなたの所属する組織を検索すれば、その会社の所在地などすぐに出てきますし、もしホームページで従業員として紹介されていたのなら、あなたの氏名、職場、顔写真が一致してしまうことになります。
放置されたSNSの情報
モザイクアプローチのやり方その4。
すでに使っていないSNSの情報から、個人情報の特定をより明確にする方法。
いまも残り続けるmixi
ログインパスワードすら忘れてしまった、もう使っていないSNSのアカウントこそ、自分の個人情報が多く残っていることがあります。
そのなかで盲点になりがちなのがミクシィ。
ミクシィが流行したのはずいぶんと前。まだITリテラシーそのものがなかった時代です。
その当時にアップした写メ、プリクラ、プロフィールがそのまま残っている場合は、いますぐミクシィにログインして削除したほうがいいです。
残念ながら当時アップした写真はいまミクシィを利用していなくても残っています。アカウントは自然に消滅などしませんからね。
自分の居場所がわかるコミニュティ
また、ミクシィには写真やつぶやきに加えコミニュティの機能があります。例えば、自分の母校、職場、趣味のサークルなどのmixiコミュニティに参加していたとするなら、その情報とあなたのニックネーム、そのほかの投稿から住所特定はできてしまいます。
もっと恐ろしいのが、インスタやツイッターなどほかのSNSと同じか酷似するニックネームを使用していること。そうすることで、普段よく投稿するアクティブアカウントと過去の所属が明確なミクシィとリンクされてしまうから。
複数のSNSをつなぎ合わせて住所や個人を特定するのも、典型的なモザイクアプローチのやり方です。
当時よりネットが身近になったいま、ミクシィの投稿からモザイクアプローチの危険はもちろん、過去の写真や個人情報がネット上に晒されるリスクがあります。
「数年前は頻繁にmixiへログインしていた。そういえば最近はmixiの存在すら忘れていた。」というあなたのことです。
いまでは考えられないプロフィール
また、ミクシィの公開プロフィールにも注意が必要です。
というのも、ミクシィはニックネームでありながらも当時はプロフィールの説明文に「〇〇小学校 → 〇〇中学校 → 〇〇高校卒業 → 社会人 → 〇〇と結婚 → 2歳児と4歳児のママ」といったように、多くの人が自分の経歴を詳細に公開していたからです。
また、「出会いいりません、彼氏います。」「記念日〇月〇日」「〇〇夫婦 〇年〇ヶ月突破!」といったように、当時付き合っていた恋人とのことを公開していることも。
このように、プライベートを詳細に説明したプロフィールは、ネットストーカーの被害にあう危険性を高めます。
黒歴史の流出や悪用
ミクシィにアップする画像やプリクラはいまのツイッターやインスタにアップするものとは少し違います。
というのも、いまはインスタなどのSNSのために写真を撮り、数多いストックのなかからインスタ映えする写真を厳選してアップする。どれだけオシャレな1枚にするかが重要です。
しかしミクシィは友だちや恋人とのプリクラをほとんどアップして、それをアルバム別に整理する。いわば公開するプライベート空間のようなものでした。そのため、いま見るとイタいと思うような元カレとの写真や、いまになっては恥ずかしいプリクラも残っているかもしれません。
写真で個人特定されてしまう以前に過去の黒歴史がネット上に流出したり、第三者に悪用されてしまうリスクもあります。
ITリテラシーに乏しい時代
考えてみてください。当時のミクシィのプロフィールをインスタやツイッターのプロフィールに記載しますか?この理由ひとつで、個人のSNSに対する向き合いかたやITリテラシーは数年で大きく変化していることがわかります。
例えば、小中学校の出身校からは学区が特定できるので住所を特定される危険があります。また、〇年〇〇ゼミ、〇〇小学校同窓会といった情報も危険です。
また、自分が詳しくプロフィールを書いていなくても親しいマイミクをたどり、ひとつひとつの情報をくもの巣のようにつなぎあわせて個人情報が特定されてしまうかもしれません。
もちろんいまは引っ越して生活環境が変わっていることもあるでしょう。しかし、自分はもちろんマイミクである友人の被害を防ぐためにも、一度ログインすることをおすすめします。
モザイクアプローチの方法で個人情報を特定することは放置しているアカウントこそリスクが高く、そのなかでもミクシィはSNSの盲点といえます。
自ら共有された情報
モザイクアプローチのやり方その4。
位置情報やフルネームなど自ら公開された情報を利用し、より簡単に個人や住所を特定する方法。
オンになった位置情報の共有
インスタやフェイスブックに投稿するとき、位置情報を追加することができます。しかし、投稿と一緒に位置情報を共有することはネットストーカーの被害を生む原因になります。
また、新しくダウンロードしたアプリを開くと「位置情報を許可してください」などと通知が出ることがあります。
いつも「承諾」しているからとよく読まずに許可してしまうと、あなたの位置情報が第三者へダダ漏れになっているかもしれません。
これはSNSに限らず、メールやチャットも同じです。大元であるスマホのプライバシー設定で位置情報サービスをオンにしていれば、FacebookメッセンジャーやiMessageなどでメッセージと同時に位置情報も共有してしまっていることがあります、気づかないうちに。
たとえその相手が友達だったとしても100%信用できるとは限りませんし、その友達がなんらかのかたちでネットや第三者へシェアしてしまえば、プライバシーの公開範囲はもっと広がってしまいます。
ちなみにスマホのGPSを許可した状態で撮影した写真に埋め込まれているExif情報は、インスタやツイッターなどのSNSへのアップロードと同時に削除されます。
なのでSNSに投稿した画像のExif情報から住所が特定されることはありません。
公開アカウントと実名
インスタやツイッターのアカウントに鍵をかけることなく全体に公開しているのであれば、そのすべての情報を全世界の誰もが閲覧できるという状態にあるということです。
これは「自分は個人や住所特定されるような投稿はしていない」と自負している人でも安心してはいけないという理由、それはプライバシーの崩壊など自分がまったく想像しないような方法でなされてしまうからです。
またニックネームでもOKのSNSにあえて実名で登録したりプロフィールに名前を記載している人は注意が必要です。
例えば、自撮り写真をインスタにアップしていて、そのアカウントは実名で全体に公開されている。実名と顔写真が一致した状態でネット上に公開されている時点で、すでに個人の特定がされています。
そのため、これまでに紹介したモザイクアプローチのやり方を駆使するまでもなく、職場や自宅の住所は容易に特定されてしまいます。
バカッターなど炎上しなければいいということではありません。
とくに女性であればあなたの投稿を見て勝手に好意を抱かれてしまう危険性もあります。そして、モザイクアプローチによってあなたの行動範囲や位置情報がわかってしまえば、街中などで「〇〇ちゃん」と声をかけられるリスクも否定できません。
自分の名前を呼ばれたら思わず振り向いてしまいますよね。
非公開アカウントでも安心できない
「自分のインスタは鍵をかけているから大丈夫」と思っている人ほど危険です。
インスタやツイッターはアカウントに鍵をかけて非公開にしたり、フェイスブックは投稿の公開範囲を友だちまでに制限すればプライバシーは守れていると思いますよね。
基本的にはアカウントが非公開になっていればまったく知らない人へ表示されることはありません。もちろん、情報収集サイトへ転載されることもありません。
でも、知らないうちに承認したフォロワーが業者やスパムであったり、悪意のある友だちやあなたのフォロワーが投稿をコピーして、プライベートの画像をほかのSNSで悪用するリスクは否定できません。
「自分の投稿は友達や親しい人だけに表示されているから」といった理由は過度なプライベートを投稿するきっかけになります。
そしてもしその画像や動画がアカウントの外へ流出していたら?
よりプライベートな内容がネット上に公開されるということは、個人や住所の特定などとても簡単でモザイクアプローチの被害にあう危険性も高まります。
そしてなにより、あなたはもちろん大切な家族や子どものプライバシーにまで影響してきます。
基本的にネットはシェアされる前提にあるもの。たとえ非公開アカウトでもネットに公開していることには違いありませんので、いま一度SNSへ投稿する内容を見直すべきかもしれません。
自分のフォロワーは本当に信頼できる人たちか、これまでフォロワーを見直したことがない人はあらためて整理したり、フォロワーをグループ分けして投稿の公開範囲を制限することも必要です。
正しいITリテラシーの大切さ
友達へのつもりで世界へ発信しているSNS
スマホで簡単にネットへ投稿できますが、それは目の前の友達へ伝えることとは違い世界中に発信するということです。
ネットが普及する前は若気の至りですんだことも、ネットに残り続ければ一生付き合うことになるかもしれません。
そしてもっと恐ろしいのが、モザイクアプローチを使ったプライバシーの崩壊です。
他人の投稿をネット上に転載することは内容によってプライバシー侵害にあたります。また、モザイクアプローチによって特定された個人や住所などの情報をネット上に公開したり、それらを悪用してストーキングにおよぶ行為は犯罪です。
しかし、こういった恐ろしい被害は事前に防いでこそ意味があります。そのためには、正しいITリテラシーのもとSNSに投稿すること、過去に投稿した不要な情報や過度なプライベートな内容は削除することが大切です。
「新しいリスクをつくらない、過去のリスクは削除する。」ということです。
自分の投稿で他人を巻き込まない
自分以外の誰かを含む写真をネットに公開するときは、必ずその人の許可が必要です。たとえそれが我が子であっても。
例えば、子どもの成長記録のつもりでインスタにアップした写真は、将来子どものプライバシーを侵害する原因になるかもしれません。
また、子どもが成長して就職や結婚するときに影響はないか、彼氏や彼女と一緒に撮った写真は数十年後に見て恥ずかしいものではないか、それらは将来的に仕事や結婚に影響はないか。
いまだけでなく先のことを考えると残り続けるリスクも否定できなくなります。
また、友達とのオンライン飲み会やZoomやライブチャットのスクショをSNSに投稿することもプライバシー侵害の恐れがありますし、それをもとに他人の情報が特定されてしまうかもしません。
たったひとつの投稿でも、その先のことを考えなければなりません。そしてその投稿が自分だけでなく誰かのプライバシーを侵害してしまうかもしれないということを。
個人情報を特定されないために晒す方法を知る
どうやってSNSの投稿から個人情報が特定されてしまうのか。モザイクアプローチの方法を理解することはリスクのある投稿を避けることにつながります。
たとえ本名を公開していなくても顔写真や風景に写り込んだ情報から本人を特定できてしまうので、まずは写真に余計な情報が写り込んでいないかチェックすること。
また、リアルタイムで発生しているイベントや固有名詞での投稿を避けること。
どれも小さな情報をつなぎ合わせることで個人が特定できてしまいます。それは、小さな意識の積み重ねで大きな晒しやストーカーのリスクを防げるということです。
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