音楽を聴いて涙が出る理由 その心理はとても幸せなこと

あのときの情景、空気、匂いまでよみがえる

まず、音楽を聴いて涙が出るのはとても幸せなことです。感受性が高まりクリエイティブな表現に反応できることは、あなた自身にとても繊細で美しい魅力があるということです。

では、なぜ音楽を聴くと涙が出るのでしょうか。たいてい涙が出るのは特定のアーティストやジャンルの曲です。

『ある曲を聴くと涙が出る』心理は、過去にも聴いたことのある曲、当時の思い出やシーン、匂いや情景までが鮮明に浮かび上がるほどの経験をし、その出来事とメロディがリンクしていること。このような条件のもとにあります。

好きなアーティストのライブで泣くとき、それはアンコールのバラード、会場が一体感に包まれ共感と安心感に包まれたときです。

そして、その情景は過去の失恋、人生の苦難などけっして鮮やかではない想い出とリンクしていることが多いのも特徴です。

その感受性を大切にしよう

音楽を聴いて泣くこと、泣けること、涙が出ること、きっとあなたには当たり前のことでもまったく感情が動かない人もいます。

それは、感受性が弱い、辛い経験をあまりしてきていない、こういった理由があります。わたしからするととても残念な人にみえてしまいます。

そして、いま音楽を聴いて涙が出る人は、きっと心が少し弱っているのだと思います。

それは、そのしぼんだ心の隙間にスーッと切なくて痛いけれどどこか心地よい歌声とメロディが入ってくると、どうしてもその傷を消化しようと涙が流れるからです。

脳が反応するんですね、「今は少し泣いて、もう少し傷を分かち合って、涙を流してスッキリしようよ」と。

そして、そんなあなたがいま音楽に求めているのは、「泣いてラクにさせてよ」という心理でしょう。それと同時に「泣かせてくれて、ありがとう」という想いもあるでしょう。

これは音楽を聴いて感動したわけではないんですね。感動よりももっと奥深くて素晴らしい心理が動いたんです。

あなた以外にも救われている人がいる

音楽を聴いて涙が流れるときは、泣きたいだけ泣けばいい。だって、音楽はそのためにあるのだから。

アーティストはみな産みの苦しみを味わい、たった一つの楽曲を完成させます。その曲がゼロからイチに変わる瞬間は、本当に難産と同じくらいの苦しみです。

その苦しみを経て世の中にリリースされた楽曲は、誰かの心を動かす使命を持っています。そして、その曲を聴いた誰かが涙を流せば、そのアーティストの産みの苦しみは報われます。

なので、音楽を聴いて涙が出るのであれば、それは思う存分泣くのがいいんです。それは、あなたのためでもありますし、その曲を生んだアーティストのためでもあるからです。

不思議な感情と心理、胸が熱くなる幸せ

音楽には心の傷を癒してくれる、言葉では表現できない魔力があります。もちろん、それを音楽理論で解明することもできてしまいます。例えば、コード進行、メジャーとマイナーの使い方など。

しかし、そこには音楽理論では説明できない、その曲のバックグラウンドに隠れたアーティストの想い、そしてリスナーの体験があります。こういったさまざまな要素が絡み合うからこそ、あのメロディに胸を打ちグッと感情が溢れ出すんです。

音楽を聴いて涙が出たとき、苦しいはずなのになぜか少し幸せで満たされた気持ちにもなりませんか?

それはきっと、その痛みや苦しみを誰かと共有できた、分かち合えた、そしてその言葉では表現できない状況を自分がリスペクトするアーティストも経験していたという喜びがあるからです。

孤独で寂しいとき、うまくいかなくて落ち込んでいるとき、嫌な出来事があったとき。あなたが精神的に弱っているとき、唯一あなたの味方でいてくれるのはあの音楽です。

恋愛、失恋、人生、挫折。あの人生の苦難に、あの音楽があった。だからこそ、いまこのときを生きていられる、この想いに共感できる人はとても幸せものです。