あの人の歯が汚いのはなぜ?
簡単にいえば、歯の大切さ=価値を知らないからでしょう。
歯が汚ければ必然的に虫歯になりますし、歯周病のリスクも高まります。しかし、たとえそうなっても医療保険がきくので数千円の出費ですみます。
ようするに、虫歯になっても歯医者に行けばいい → 保険がきくからお金がかからない、といった考えから歯に対する意識がとても低くなるわけです。
もちろん性格に原因があることもあるでしょう。めんどくさがり、無責任、まあいいや、楽観的、鈍感。普通なら気づくことに気づかないタイプやだらしのない性格であるほど、歯に意識が向きません。しかし、アメリカ人はどれだけ眠くても「まあいいか」ではなく、ちゃんと歯磨きをして眠ります。そして、普段から歯のメンテナンスには気をつかっています。
それは、アメリカの歯科治療は医療保険が適応されず、すべて自由診療だからです。そのため、虫歯になると数十万円のお金がかかってしまいます。また、歯は社会的なステイタスでもあるので、きれいであればその人の評価も高くなりますし、汚ければその人の人格や家庭環境まで疑問視されるからです。
そして、歯が汚い日本人がアメリカに住めば、どんなに仕事で成功していようと貧困層とおなじように見られてしまいます。
わたしたちはクルマを大切に乗ります。それは、キズつけると修理代が高くつくから。なのに、歯はガンガン傷つけています。歯もおなじように保険がきかなかったら、わたしたちはクルマとおなじように大切にするのでしょうね。
歯を失ってから気づく「あとの祭り」
60歳、70歳になって、初めて歯の大切さを知ったという人は少なくないようです。そして、残念なことに多くの人は自分の歯を失ってからその事実に気づくそうです。
失った歯はブリッジか部分入れ歯、そしてインプラントで治療するしか方法はありません。ここで、多くの人は途方に暮れます。というのも、医療保険が適応されるのはブリッジと入れ歯のみでインプラントは自由診療になるからです。
しかし、保険内で安く仕上げられるブリッジや入れ歯はそれぞれリスクやデメリットが多くあり、これまでのようにおいしく食事をすることすらできません。ようするに、自分の歯を失い保険内で治療する場合は、歯に負担をかけながら一生違和感をもちながら生活していかなければならないわけです。
となると、歯に負担をかけず天然歯とおなじように生活できるインプラントを選びたくなりますが、これは最低でも40万円〜の治療費と半年〜1年ほど時間がかかることが多く、とても気軽におこなえる治療ではありません。
そして、糖尿病や高血圧などの持病がある場合は、たとえお金があってもインプラント治療すらできない可能性もあります。
これまで歯が悪くなっても保険内で生活に支障のない治療をしてくれていたのに、いざ歯がなくなるとこの始末。虫歯になっても数千円ですむからと気軽に考えていたツケが回ってきたわけです。
ボーッと生きてる弊害
なにも考えず歯医者に身をゆだねてきたわたしたちは、いずれその被害者となります。
日本では昔から虫歯になったら削る→詰めるの繰り返し。もちろん、予防歯科の重要性も強くアナウンスされていませんから、再治療となればまた削る→被せる、またまた削る→神経を抜く→大きく被せるといった悪い流れが一般的です。
これが保険内で治療できるのですから、わたしたちはみな歯医者を信じ、お財布も傷めずにすんだわけです。
しかし、それが歯科治療における保険治療の弊害です。というのも、医療保険内で可能な歯科治療はとても精度が低く、いわゆるその場しのぎであるということ。歯を長持ちさせる治療ではまったくありません。
たとえば虫歯になっても保険内であれば数千円ですみますが、そこに被せる銀歯は材質や精度に問題があります。ぴったりと天然歯に沿ってつくられていませんから、わずかな隙間から食べカスや汚れが侵入し、あらたに虫歯が発症してしまうわけです。
いまでは、そうならないためにセラミックの被せ物や詰め物を装着する人が多くなりましたが、もちろんこれは自由診療。昔の日本はセラミック治療など一般的ではなく、歯医者が勧めれば「金儲け主義」と悪い口コミがたってしまいました。
すべてに疑ってかかるべき
歯を長持ちさせるなら数千円でできる銀歯ではなく、数万円かかるセラミックを入れるべきです。また、保険治療であれば歯の神経を抜くしか方法がなくても、自由診療なら神経を残すことができたかもしれません。
歯に対して興味がないわたしたちは、「もう神経を抜くしかないですね」と歯医者に言われると「わかりました」と深く考えず返事をしてしまいます。
そうして神経を抜いた歯は枯れ木とおなじように長持ちせず、歯の根に膿や細菌が溜まりやすくなります。そして、いずれまた多くのケースで再治療となってしまいます。
こんなリスクを説明されないまま、まったく知らないまま、とても大切な歯の神経をとても簡単に抜いてしまっているわけです。
削れば削るほど歯は悪くなる → 削れば削るほど歯医者は儲かる = 保険治療は歯を悪くする。歯医者も商売ですから、これでいいわけです。
べつに患者さんの歯が長持ちしなくても関係ありませんし、また悪くなれば来院してくれます。歯にとってベストな自費診療を勧めて患者さんが離れていってはマズいですから。
こうして保険内で虫歯の治療をすすめていくと、数年後また歯が悪くなって削る → 根管治療をする、の繰り返し。そして、いずれ歯を失ってしまう可能性もあります。
ようするに、本来なら長持ちできた歯も、保険内で「それなり」の治療をしてきたばっかりに残せなくなるわけです。もし正しい知識があれば、あえて自由診療を選び、より高度で効果的な専門治療を受けれたかもしれません。
自分の歯はとても素晴らしいもので価値はプライスレス。歯を残すために20万円の治療をするのと、歯を失ってからインプラントに60万円の支払う、あなたはどちらがいいですか?
あなたは何歳で目が覚めた?
歯の大切さに気づいた人は歯の価値を知らない人に比べると、病気のリスクや生涯の医療費、そして人生のクオリティ(QOL)に大きく差が出ます。
日本は先進国のなかでもっとも虫歯が多くデンタルIQがきわめて低いことで有名。近年やっと矯正や神経を抜かない治療が一般的になってきましたが、それでも歯科先進国のアメリカやスウェーデンと比較するとまだまだ認知度が低すぎます。
歯科治療が自由診療の先進国では、虫歯のない歯をたもつべく定期的に歯医者へクリーニングに行きます。そうすれば虫歯治療の出費はおろか歯を失うリスクもありません。
また歯をきれいにたもつことで他人の印象がよく、人間関係を良好にきずけます。もちろん、思いっきり歯を出して笑うこともできるので、精神的にも健康に過ごせます。
すべては予防歯科、たかが歯、されど歯。歯をおろそかにすることで身の周りと今後の人生にさまざまな弊害を生んでしまいます。残念なことにデンタルIQの低い日本人は、この事実に気づくまで時間がかかります。それは、なにか悪いことが起きたとき、恋人のように失ってから気づくものかもしれません。
多くの人が髪を染めたりメイクをするように、わたしたちの周りには歯の汚い人が多いから、歯は汚くてもいいんだと錯覚してしまいます。日本を代表する安倍総理大臣の歯が汚いのは、この日本という国のデンタルIQを象徴しているともいえます。
しかし、そんななか日本以外の先進国では一般的である「予防歯科」と「歯の大切さ」。このことに少しでも早く気づいてほしい、そう願うばかりです。
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